環境問題がますます深刻化する中、環境に優しい「省エネ住宅」に注目が集まっています。しかし、省エネ住宅と聞いても、その基準や種類など分からない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、省エネ住宅とは何か、その基準や性能、具体的な種類などを詳しく解説していきます。また、記事の最後では、省エネ住宅を建てる際に活用できる補助金制度についてご紹介します。
これから省エネ住宅を建てようか検討している方は、ぜひ参考になさってください。
省エネ住宅とは?
省エネ住宅とは、高い断熱性能やエネルギー効率の良い設備の導入により、生活する際のエネルギー消費を抑えている住宅を意味します。
たとえば、屋根や壁、床などに適切な断熱材を使うことで、室内が外気の影響を受けにくくなります。その結果、室温を調整するためのエアコンの使用が最小限になり、そのエアコンのエネルギー効率も良ければ、更にエネルギー消費が抑えられます。
省エネ住宅は、長く住み続けるほどにエネルギーに伴うコストが削減されるため、経済的なメリットが得られます。また、エネルギー消費を抑えることで、環境への負荷も最小限に抑えられることから、地球環境に優しい住宅としても注目を集めています。
2025年以降は省エネ住宅が義務化に
温暖化などの環境問題が懸念される現在、環境負荷を抑える省エネ住宅の重要性は、年々高まっています。
その結果、日本では2025年4月以降、原則すべての新築住宅・非住宅において、省エネ基準に適合することが義務づけられる予定です。
そのため、これから新築の家を建てる際は、なるべく省エネ住宅の基準に合致することを目指すべきだといえるでしょう。
参考:建築物省エネ法が改正されました(令和4年6月17日公布)|国土交通省
省エネ住宅の性能に関わる要素
省エネ住宅の性能に関わる要素として、「断熱」「日射遮蔽」「気密」の3点を押さえておくことが重要です。
それぞれの要素について、順に詳細を確認していきましょう。
断熱
断熱とは、家の中と外での熱の移動を遮断することを意味します。
一般的に、熱は暖かいところから冷たいところに向かって移動する性質を持っています。そのため、暑い夏に部屋を冷やしたとき、断熱性能が低い家だと、暑い外気が部屋に入ってきてしまいます。また、寒い冬に部屋を暖めた場合は、反対に部屋の暖気が外へと流出してしまいます。
省エネ住宅では、家の中と外との境目である屋根や外壁、床下などに断熱材を使用することで、これら自然な熱の移動を遮断できます。その結果、1年を通して最低限の空調のみで、家の中を快適な温度に維持できます。
日射遮蔽
日射遮蔽とは、太陽光(日射)の熱が家の中に入るのを防ぐことを意味します。
前述の通り、断熱性能を高めれば、外気の影響を受けにくくなります。しかし、太陽光にも熱エネルギーが含まれているため、日射遮蔽性能が低いままだと、日差しの強い夏場に家の中が暑くなる原因になります。
とはいえ、快適に暮らすうえで、家の中に太陽光をまったく入れないことは現実的ではありません。そのため、日射遮蔽性能の高い窓ガラスやサッシを設置したり、ひさしやシェードなどで日陰を作れる仕様にしたりすることが効果的です。
気密
気密とは、家の中の空気が外に逃げないようにすることです。より簡単に言えば、家の中の隙間をなるべく少なくすることを意味します。
せっかく断熱性能が高くても、隙間が多いとそこから整えた空気が外に逃げてしまい、空調効率が高まりません。そのため、省エネ住宅では、機密性能にも考慮して家づくりをする必要があります。
なお、単に気密性能を高めるだけだと、家の中の空気が滞りやすくなるため、24時間換気システムと併せて導入することが大切です。
省エネ住宅の基準
「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」では、省エネ住宅の基準として「外皮基準」と「一次エネルギー消費量基準」の2点を定めています。各基準の詳細について、以下で順に確認していきましょう。
外皮基準
外皮基準においては、断熱性能と日射遮熱性能の2点が合わせて評価されます。断熱性能はUA値、日射遮熱性能はηAC値という数値でそれぞれ表され、ともに数値が低いほどに省エネ性能が高いことを意味します。
なお、年間の気温などの条件が地域によって異なるため、UA値とηAC値の基準値は、以下の通り全国8つのグループで区別化されています。
一次エネルギー消費量基準
建築物省エネ法では、一次エネルギー消費量の評価基準として「BEI」という指標を使っています。
そもそも一次エネルギーとは、自然から直接採取できるエネルギーのことを意味します。しかし、省エネ住宅においては、特に冷暖房・換気・照明・給湯などで使う電気やガスのことを意味します。
一次エネルギー消費量の評価基準であるBEIは、住宅の設計一次エネルギー消費量を、建物用途などで定められた基準一次エネルギー消費量で除した値です。数式で表すと「設計一次エネルギー÷基準一次エネルギー」となります。
なお、通常の省エネ住宅ではBEIが1.0以下(BEI ≦ 1.0)であることが基準ですが、ZEHなどのより条件が厳しい省エネ住宅の場合、更に数値を低くする必要があります。
省エネ住宅の具体的な種類
省エネ住宅は、その認定条件などによって以下の種類に分けられます。
- ZEH住宅
- LCCM住宅
- 長期優良住宅
- スマートハウス
それぞれの省エネ住宅の詳細について、順に確認していきましょう。
ZEH住宅
ZEH住宅は、正式名称を「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」と言い、年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指す省エネ住宅です。
人が普通に生活する限り、一次エネルギー消費を抑えることはできても、ゼロにすることは本来できません。そのため、ZEHでは消費した一次エネルギーを補うために、太陽光発電などの創エネ設備が取り入れられます。消費したエネルギーと同等のエネルギーを生み出せれば、結果的に収支がゼロに近づくという考え方です。
また、ZEHは一次エネルギーの削減量や、再生可能エネルギーの比率などに応じて、以下のように更に細分化されています。
- ZEH(ゼッチ)
- Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)
- ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド)
- ZEH+(ゼッチプラス)
- 次世代ZEH+
LCCM住宅
LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅は、家の建設から解体までのライフサイクル全体において、CO2収支をマイナスにすることを目指す省エネ住宅です。
前述のZEHが年間の一次エネルギー消費に着目していたのに対し、LCCM住宅ではより長いスパンでのエネルギー消費削減が目標とされています。
LCCM住宅として認定されるためには、容量の大きい太陽光発電パネルの設置など、ZEHより更に厳しい条件を満たすことが求められます。
長期優良住宅
長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で住み続けられる住宅として、2009年に制定された省エネ住宅です。
長期優良住宅に認定されるためには、省エネ性能が高いことに加え、高い耐震性能や劣化対策、メンテナンスのしやすさなどが求められます。
長期優良住宅は、環境に優しいだけでなく、耐久性の高さも備わっているため、何代にもわたって住み続けられるマイホームが実現できるでしょう。
スマートハウス
スマートハウスは、IoT技術やAI技術を活用することで、エネルギー効率を最適化させた省エネ住宅です。
たとえば、遠隔で操作できるスマート家電や各種センサーを設置することで、エネルギーの無駄を極力省きます。また、家全体のエネルギー消費を司る「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」を採用して、効率的なエネルギー使用を実現させます。
その結果、生活の質を落とすことなくエネルギー消費を削減でき、家計にも環境にも優しい省エネ住宅が実現します。
省エネ住宅に関する補助金制度
省エネ住宅は、環境にとって優しい住宅であることから、国や各自治体で建設を後押しする補助金制度が設けられています。
2024年現在において、全国の省エネ住宅建設で使える可能性がある補助金は、以下の通りです。
- 子育てエコホーム支援事業
- ZEH補助金
- LCCM住宅整備推進事業
- 先進的窓リノベ事業
- 給湯省エネ事業
また、これら以外にも、お住まいの都道府県や市区町村などの自治体で実施している補助金制度を利用できる可能性があります。補助金の詳細は年度によって異なる可能性があり、人気の場合は早期で締め切られることも想定されます。そのため、利用を検討する場合は、早めにお住まいの自治体窓口などに問い合わせましょう。
ここでは、上記で挙げた全国対象の5種類の補助金制度について、詳細を順にご紹介していきます。
子育てエコホーム支援事業
「子育てエコホーム支援事業」は、子育て世帯および若者夫婦世帯を対象に、省エネ住宅の購入・リフォームに必要な資金を補助する制度です。
注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入の場合は、長期優良住宅の基準を満たせば100万円、ZEHの基準をみたせば80万円が補助されます。また、リフォームの場合は工事内容に応じて補助額が異なり、子育て世帯・若者夫婦世帯がリフォーム前提で既存住宅を購入する場合は、最大60万円が補助されます。
詳しくは「子育てエコホーム支援事業」をご参照ください。
ZEH補助金
「ZEH補助金」は、ZEH基準を満たした省エネ住宅を対象とする補助金制度です。
ZEH補助金は、ZEHの新築住宅を対象とする「戸建住宅ZEH化等支援事業」と、ZEHの集合住宅を対象とする「集合住宅の省CO2化促進事業」に分けられます。
戸建住宅ZEH化等支援事業において、ZEHの基準を満たす省エネ住宅には、一戸あたり55万円が補助されます。また、より条件の厳しいZEH+の基準を満たす省エネ住宅は、100万円が補助されます。
詳しくは「ZEH補助金」をご参照ください。
LCCM住宅整備推進事業
「LCCM住宅整備推進事業」は、住宅のライフサイクル全体で、CO2収支マイナスを実現する省エネ住宅を対象とする補助金制度です。
新築戸建住宅において、強化外皮基準や再生可能エネルギーの導入、25%以上の一次エネルギー消費量の削減などと、全部で9種類の要件が定められています。要件を満たしたうえで申請すれば、設計費や建設工事等における補助対象工事の掛かり増し費用のうち、最大140万円までを補助してもらえます。
詳しくは「LCCM住宅整備推進事業 概要」をご参照ください。
先進的窓リノベ事業
「先進的窓リノベ事業」は、省エネ住宅において欠かせない、断熱性能の高い窓の設置を対象とする補助金制度です。家庭からのCO2排出削減に加え、今後ニーズが高まる断熱窓の生産効率向上・競争力強化も目的としています。
既存住宅における開口部の断熱改修工事の発注者を対象に、最大200万円までを補助してもらえます。内窓・外窓だけでなく、ドアの交換も対象です。
詳細は「先進的窓リノベ2024事業」をご参照ください。
給湯省エネ事業
「給湯器省エネ事業」は、家庭のエネルギー消費量が特に大きい給湯分野において、高効率給湯器の普及拡大を目指す補助金制度です。
補助対象は新築から既存住宅の購入・リフォームまで幅広く、戸建住宅では2台まで、共同住宅などでは1台までが補助対象になります。
補助金額は、設置する給湯器の種類によって異なります。エコキュートを代表とするヒートポンプ給湯器の場合は8万円、ハイブリッド給湯機で10万円、エネファームなどの家庭用燃料電池の設置で18万円が補助されます。
詳細は「給湯省エネ2024事業」をご参照ください。
まとめ
今回は、省エネ住宅とは何かをテーマに、基準や性能、補助金などについて詳しく確認してきました。
省エネ住宅とは、生活に伴うエネルギー消費を最小限に抑える住宅を意味します。世界的に脱炭素化が推し進められている背景から、2025年4月以降は、新築住宅を建てる際は省エネ基準を満たすことが義務化される予定です。
省エネ住宅は、環境に優しいだけでなく、エネルギー効率を抑えることで家計にも優しい住宅だといえます。今回ご紹介したことを参考にして、快適で長く暮らせる省エネ住宅を実現させましょう。
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