近年、家族全員が長く快適に暮らせる家として「バリアフリー住宅」に注目が集まっています。しかし、バリアフリー住宅に興味はあっても、その特徴やメリット・デメリットなどが分からず、家づくりで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、兵庫県でバリアフリー住宅を建てる方に向けて、その特徴や建てる際のポイント、使える補助金制度などについて、詳しく解説していきます。
バリアフリー住宅を建てようか検討している方は、ぜひ参考になさってください。
バリアフリー住宅とは?
バリアフリー住宅とは、すべての家族が安全かつ快適に、安心して暮らせる前提で建てられた住宅を意味します。
バリアフリーとはもともと「障壁(バリア)から自由(フリー)になる」という意味です。そのため、バリアフリー住宅というと高齢者や障がいを持つ方をターゲットにした住宅だと思われがちですが、そうとは限りません。一般的な住宅より段差が少なかったり、空間が広々としていたりすることで、あらゆる家族にとって暮らしやすい空間が実現されます。
なお、バリアフリーに似た言葉に「ユニバーサルデザイン」があります。ユニバーサルデザインは「万人に使いやすいデザイン」のことなので、住宅設計においては、どちらもほぼ同じ意味で使われていると考えて良いでしょう。
バリアフリー住宅の主な特徴
バリアフリー住宅の特徴は、主に以下の3点です。
- 段差を極力少なくする住宅設計
- ゆとりのある空間づくり
- 動線を意識した間取り
これらを意識して家づくりをすれば、家族全員にとって快適な住まいが実現されます。それぞれの特徴の詳細について、以下で順に確認していきましょう。
段差を極力少なくする住宅設計
バリアフリー住宅は、一般的な住宅に比べて段差を極力少なくするように設計されます。
普段あまり意識されませんが、私たちの身の回りには色々な段差があります。健康な方が自分の足で歩く分には問題なくても、車椅子の方や、足が思うように上がらない方にとっては、そのような段差が障壁になり得ます。
そのため、バリアフリーの家づくりをする際は、部屋の間の段差をなくしたり、なるべく階段を設けないようにしたりなどの工夫が重要となります。
ゆとりのある空間づくり
バリアフリー住宅は、一般的な住宅と比べて空間にゆとりを持たせて作られます。
一般的な住宅の場合、人が1人通れるスペースがあれば特に不便は感じないでしょう。しかし、車椅子で生活する方や、歩行に介助が必要な方がいる場合は、それでは移動がしづらくなってしまいます。
そのため、特に将来的な安心のためにバリアフリー住宅を検討している場合は、空間のゆとりを考えた家づくりを意識するようにしましょう。
動線を意識した間取り
バリアフリー住宅では、動線を意識した間取りも重視されます。
身体が元気なうちは、家事の動線が多少長かったとしても、それほど気にならない方も多いでしょう。しかし、足腰が弱くなったり、車椅子が必要になったりすると、動線次第で家事のしやすさが大きく変わってきます。
特に、トイレやキッチンなどの水回りの動線は住みやすさに直結するので、間取りを決める際は、動線の長さに配慮すると良いでしょう。
バリアフリー住宅のメリット
自宅をバリアフリー住宅にすることで、家族それぞれにとって多くのメリットが得られます。
ここでは、特に代表的な5つのメリットについて、詳細を確認していきましょう。
メリット①:高齢者が暮らしやすい
自宅をバリアフリー住宅にする最も大きなメリットは、高齢者が暮らしやすくなる点です。
二世帯住宅などで家族に高齢者がいる場合は、バリアフリー住宅に設計することで、より快適な暮らしを送れるでしょう。
また、現在高齢者がいない場合でも、誰しもがいつかは高齢者になります。そのため、自分自身が年齢を重ねたときを見据えて、自宅をバリアフリー住宅で設計する方も増えています。
メリット②:介護や介助がしやすい
バリアフリー住宅には、介護・介助がしやすくなるメリットもあります。
一般的な住宅ではスペースが狭く、思うように高齢者を介護したり、障がいを持つ方を介助したりするのが難しいことも多いです。その点、空間にゆとりを持たせたバリアフリー住宅であれば、介護・介助にかかる労力やストレスを最小化できます。
特に、トイレや浴室といった場所は、バリアフリー設計かどうかで介護・介助のしやすさが大きく変わるので、重点的にデザイン設計をすると良いでしょう。
メリット③:車椅子での移動がしやすい
バリアフリー住宅のメリットとして、車椅子での移動がしやすい点も挙げられます。
一般的な住宅だと、車椅子で移動するには廊下が狭すぎたり、段差が多くて自力では乗り越えられなかったりします。また、2階建て以上の家だと、階段移動が自力ではできないので、介助する手間もかかるでしょう。
その点、バリアフリー設計で建てられた家であれば、それら生活のストレスを減らし、車椅子の方にとっても快適な暮らしが実現します。
メリット④:ヒートショックが予防できる
バリアフリー住宅には、ヒートショックが予防できるメリットもあります。
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が上下し、心臓などに負担がかかることを意味します。若く健康な方は問題ないことも多いですが、身体の弱い方や高齢者の場合、最悪ヒートショックで死に至る可能性もあります。
バリアフリー住宅では、段差や広さなどの空間的なバリアフリーだけでなく、高気密や床暖房などにより、温度のバリアフリーも意識されています。そのため、バリアフリー住宅で暮らすことで、ヒートショックのリスクを減らし、より安心安全な暮らしが期待できます。
メリット⑤:効率的な生活動線を確保できる
自宅をバリアフリー住宅にすると、生活動線を効率的にできるメリットもあります。
一般的な注文住宅の場合、居室の配置やデザイン性などを重視した結果、生活動線が後回しになることも少なくありません。その結果、完成してすぐは気にならなくても、長く暮らすにつれて、動線の使いにくさがネックになることも考えられます。
その点、バリアフリー住宅では効率的に動けることを重視して設計されるので、健康な方にとっても使いやすい家事動線が実現されるでしょう。
バリアフリー住宅のデメリット
以上見てきたように、バリアフリー住宅はメリットの多い住宅ですが、一部デメリットもあるので注意が必要です。
ここでは、特に注意したい3種類のデメリットについて、詳しく確認していきましょう。
デメリット①:広い敷地面積が必要
バリアフリー住宅は、建てるために広い敷地面積が必要な点に注意が必要です。
一般的な住宅と比べ、バリアフリー住宅は玄関や廊下、居室などを広く設計します。また、階段移動は大きな負担になるので、平屋で設計することも多く、複数階建ての家より広い敷地面積が求められます。
ただし、間取り設計などを工夫すれば、それほど広くない敷地だとしても、快適なバリアフリー住宅にできる可能性もあります。そのため、敷地面積に不安がある場合でも、一度工務店やハウスメーカーに相談してみると良いでしょう。
デメリット②:建設費用が高くなりやすい
バリアフリー住宅は、建設費用が高くなりやすい点がデメリットになり得ます。
「廊下や居室を広くする」「手摺りを設ける」「浴室やトイレに暖房を付ける」など、バリアフリー住宅を建てるには、一般的な住宅設計より多くの資金が必要とされます。また、先述の敷地面積の広さが、土地代としてコスト面に影響することも考えられます。
ただし、バリアフリー住宅を建てる際は、国や自治体による補助金・助成金が利用できる可能性があります。それらの制度を使えば、実質的な負担額をある程度抑えられるので、事前に詳細を確認しておくと良いでしょう。
なお、兵庫県で利用可能な補助金の詳細については、後ほど改めて説明します。
デメリット③:他の部屋が狭くなる
バリアフリー住宅にする際は、バリアフリー化した空間以外の部屋が狭くなるデメリットも考えられます。
当然ながら、家づくりにおいて空間は無限ではありません。バリアフリーのために玄関や廊下、浴室などのスペースを広くすると、その影響で狭くせざるを得ない空間も出てくるでしょう。
ただ、このデメリットは間取り設計時に工夫することで、影響を最小限に抑えられます。たとえば、クローゼットなどの占有スペースを減らして床下収納を取り入れたり、廊下を減らして部屋をダイレクトに繋いだりなどの工夫が考えられます。
これらの工夫は、家族だけで考えていてもアイデアが浮かばないことが多いので、工務店やハウスメーカーに相談し、プロの意見を聞いてみることをおすすめします。
代表的なバリアフリー住宅の設備と設計のポイント
ここでは、代表的なバリアフリー住宅の設備と、それぞれを設計する際のポイントについて、詳しく解説していきます。
これから兵庫県でバリアフリー住宅を建てる予定の方は、ぜひ参考になさってください。
浴室
バリアフリー住宅の浴室では、浴槽の深さや扉、床の素材などに注意しましょう。
まず、浴槽の深さは一般的に50~60cm程度のものが多いですが、入浴時の転倒リスクを下げたい場合は、40m程度にしておくことをおすすめします。また、浴室の入り口などの段差も極力なくし、介護や介助がしやすいよう、扉は引き戸にしておくと良いでしょう。
それに加え、浴室の床材は滑りにくく、ヒートショックが起きないよう断熱効果の高いものを選ぶのがおすすめです。
トイレ
バリアフリー住宅のトイレでは、扉とトイレの向きが重要です。
一般的なトイレの場合、扉を開けた正面に便器が設置されていることが多いですが、これでは車椅子の方が用を足す際、便座への移動がしにくくなります。
そのため、バリアフリー住宅のトイレでは、便器と入り口の向きを並行にする、あるいは車椅子で入れるよう空間を広く取ることが重要です。また、トイレの扉は開き戸よりも引き戸の方が、トイレと廊下の空間を広く確保できます。
洗面台
バリアフリー住宅の洗面空間づくりでは、洗面台の高さと幅に注意しましょう。
まず、車椅子で生活する方がいる場合、座った状態で使いやすいよう、洗面台の高さを低くすることが重要です。ただし、洗面台が低いと、立って使用する方にとって使いにくくなる可能性があるので、高さ違いで2箇所設置するのも良いでしょう。
また、洗面台の横幅もなるべく広く取っておくと、車椅子の方が自分で使う際はもちろん、介助する方にとってもストレスが少なくなります。
キッチン
バリアフリー住宅のキッチンは、使う方に合わせて高さを決めるようにしましょう。
一般的なキッチンの場合、高さは85cm前後が使いやすいとされています。一方、車椅子の方が使用する場合は、少し低く70cm前後が良いといわれています。
しかし、家族に車椅子を使う方がいても、その方が料理をするとは限りません。そのため、誰が主にキッチンを使うのかを想定し、それに合わせて高さを検討すると良いでしょう。
リビング
バリアフリー住宅のリビングでは、空間を広々取るのはもちろんですが、テーブルの高さに注意しましょう。
車椅子に乗っている状態だと、椅子に座っているときより座面が高くなります。そのため、テーブルの高さは70cm前後のものを選んでおくと安心です。また、必要に応じて高さが変えられるテーブルもあるので、ニーズに合わせて選ぶと良いでしょう。
廊下
バリアフリー住宅では、廊下の幅と段差の有無に注意しましょう。
一般的に、手動タイプの車いすは幅が63cm以下、電動タイプは70cm以下に設計されています。そのため、車椅子で移動する想定であれば、廊下の幅を最低でも75cm以上にしましょう。
また、廊下と各部屋の間に段差があると、車椅子が通りにくくなったり、段差で躓きやすくなったりするので、段差を極力なくすことが重要です。
玄関
バリアフリー住宅の玄関では、空間を広くすることに加え、段差を減らすことが重要です。
上がり框に段差があると、車椅子の方が自力で家に入るのが難しくなります。ただ、他の家族が靴の脱ぎ履きをするうえで、段差がある方が良いこともあるので、玄関を2つに分ける方法も効果的です。
兵庫県でバリアフリー住宅を建てる際に使える補助金制度
兵庫県でバリアフリー住宅を建てる際は、国や自治体が実施している補助金制度を利用できる可能性があります。
ただし、補助金制度の詳細や条件などは年度によって変わる可能性があるので、利用を検討する際は、必ず自治体ホームページなどで最新情報を確認するようにしてください。
ここでは、代表的な2つの補助金制度について、詳細を確認していきましょう。
介護保険における住宅改修
「介護保険における住宅改修」は、要介護者などがいる家庭でバリアフリー住宅への改修をおこなう際に支給される、国が実施する補助金制度です。
対象となる改修工事は、手すりの取り付けや段差の解消、引き戸への取り換えなど多岐にわたります。
支給の上限額は18万円です。詳しくは「介護保険における住宅改修」をご参照ください。
人生いきいき住宅助成事業
「人生いきいき住宅助成事業」は、バリアフリー住宅への改造等にかかる経費の一部を補助(助成)する、兵庫県が実施している制度です。
要介護・要支援認定を受けた被保険者のいる世帯、あるいは身体障害者手帳・療育手帳を交付された方のいる世帯が対象となります。
助成額は所得によって変わり、対象となる工事費の3分の1以上とし、世帯あたりの上限が100万円までと定められています。詳しくは「人生いきいき住宅助成事業」をご参照ください。
まとめ
今回は、兵庫県でバリアフリー住宅を建てることをテーマに、バリアフリー住宅の特徴や設計時のポイント、補助金制度などについて、詳しく確認してきました。
バリアフリー住宅は、高齢の方や障がいを持つ方にはもちろんのこと、家族全員にとって住み良い暮らしを実現させる空間になり得ます。今回ご紹介したことを参考にして、兵庫県内で理想的なバリアフリー住宅を実現させましょう。
大工産は、兵庫県加古川市に本社のある地域密着の工務店です。良質な木材だけを用い、夏は「さっぱり」、冬は「しっとり」、年中快適に過ごす事の出来る住み良い家づくりを得意としております。